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連続講座②「日本国憲法の立憲主義」講師:杉原泰雄さん(憲法研究者、一橋大学名誉教授)

講師の杉原泰雄さんは、憲法研究者で一橋大学名誉教授である。近代国家において多くの国が取り入れた立憲主義の体制は、憲法により統治権とその担当者(権力者)を縛ることを課題として登場した。日本は明治憲法と日本国憲法という2つの経験をしているが、明治憲法は「天皇主権」であり、保障すべきは「臣民の権利」、他方、日本国憲法は「国民主権」であり不可侵の「人権」を保障しているという基本原理の相違を解説。2つの憲法で同じ規定・文言が使用されても権力担当者の縛り方が異なるのは当然だという。   権力担当者が権力の濫用に走りがちになることは、古くから思想家たちによって指摘されてきたことであり、日本だけに限られたことではない。しかし、憲法前文に言う「戦争の放棄」という平和主義の体制から、集団的自衛権も認められるとする積極的平和主義への解釈改憲的転換は、日本国憲法の立憲主義を軽視・無視する強権政治にほかならない。日本の憲法は良い憲法だが、政治と憲法がこれほど離れている国はない。現政権の安倍首相は「法の支配」という言葉を口にするが、これは「立憲主義」とは異なるものだ。今、日本の立憲主義は危機的状況にある、と穏やかな口調の中に怒りを込めて語り、憲法学習は立憲主義の勉強から始めてほしい、ぜひ学習会をと呼びかけた。