講師の岡本厚さんは1996年から2012年まで、雑誌『世界』の編集長を務め、現在は岩波書店社長である。
『世界』の大きなテーマの1つに「東アジアとの和解」があり、岡本さん自身も金大中大統領へのインタビューや平壌訪問等を経験してきたと語る。明治維新後いち早く近代化した日本は、中国・朝鮮などを遅れたものとして優越意識を持ち、隣国朝鮮を植民地化した。朝鮮半島北部とは100年以上も「不正常な関係」だと歴史を振り返る。
45年以降の米ソ冷戦」時代、東アジアは中国内戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争等々「熱戦」の時代であったが、日本はアジアと対立してもアメリカとの同盟を選択するという方向を選んだ。80年代から東アジアは戦火も消えて安定の時代に入り、韓国の民主化の中から噴出してきたのが慰安婦問題等植民地化時代の歴史認識であり、韓国の反日は民族のアイデンティティそのものなのだと断言した。
この20数年で、弱くて貧しいアジアから強くて豊かなアジアへと変容したが、その中で孤立化する北朝鮮の核兵器開発は、アメリカへの恐怖からにほかならない。対米依存という構造の中にいる日本にできることは何か。それは難しいことだが、南北朝鮮・中国・米国・ロシア・日本による6者協議という試みを日本が提案し対話する場をつくること。対話がある間は戦争にならない。また今や民族・国家単位から世界・人類規模で、気候変動などの大課題を考えていかなければならないときなのだと述べた。