三浦瑠麗さんは国際政治が専門で、東京大学政策ビジョン研究センター講師を務める。
2016年はアメリカのトランプ大統領誕生、イギリスのEU離脱国民投票と変動の年だったが、それは2017年も続いており、ヨーロッパ主要国の選挙では右派が強くなるのではないかとも言われている。
グローバリゼーションとは「ヒト・モノ・カネ・情報の移動が大幅に自由化されること」と定義づけられる。地球規模で動くグローバル化によって、世界に様々な変化が起こったが、先進国では中産階級の地盤沈下が生じ、グローバル化への反発を招いた。一方新興国にとってグローバル化は発展する権利であり、先進国がその権利を奪うことはできない。
続いて2016年アメリカ大統領選についての解説と分析を、現地でのインタビューなどをふまえて行った。民主党ヒラリー優勢の大方の見方を覆して、共和党トランプが勝利したのは何故かと4つの躍進戦略を挙げる。90年代以降の社会政策と経済政策を切り離し、白人中産階級を利する中道の経済政策を売り込むこと。中産階級の下り坂への不安を、反移民言説でより下層カーストの存在を提示することによって和らげること等々である。本来リベラルであるはずの黒人運動や労働組合の人々の票も、リベラルなヒラリーではなくトランプに流れたという。 選挙中からのトランプの外交政策の特徴は、先ず冷戦後4半世紀のアメリカの外交政策への痛烈な批判である。トランプの言う中長期的な国益に対する脅威は、イスラム過激主義によるテロの脅威であり、中国の経済力に対する脅威である。TPPからの離脱、メキシコ国境との間の「壁」建設、イスラム7カ国からの渡航禁止令等々、トランプ政権初動の過激な発言は、「衝撃と畏怖」戦略―衝撃を与え息がつけない間に次々と攻撃する軍事戦略に似ているとした。また、ドラッグ対策、不法移民規制など1つひとつは地味な政策をリンクさせることで、トップニュースに引き上げるなど報道を操ることもトランプの戦略だと述べた。
トランプ政権は日本との間でまだ対立は起きていないが、米韓FTA見直しの動きなど、旧来からの同盟国にも圧力をかける政権であると指摘。二極でも単極でもなく3カ国以上の多極の時代は勢力均衡が特徴であり、皆が勢力のバランスを維持しようとし、その様相は地域によって異なる。不均衡を拡大させようとする北朝鮮のような国がいると、韓国や日本が手を携えてアメリカを引き入れようとするが、アメリカは軍事覇権を低下させる時代に入り、それが今後の東アジアの特殊性かもしれないと結んだ。