講師は、mネット・民法改正情報ネットワーク理事長でジャーナリストの坂本洋子さん。
選択的夫婦別姓運動を20年以上やっているが、いまだ実現できていない、こんなに抵抗されるとは思わなかった、と語る坂本さんは、熊本県出身。4歳で母が離婚、中学生の時に母が再婚し苗字が変わり、いやだと思ったが、当時、女性問題とはつながらなかったという。
戦後の民法改正でも夫婦同姓は維持され、1975年の国際婦人年に選択的夫婦別姓制度の導入を求める請願が国会に提出され、1996年には法制審議会が選択的別姓の答申を出したにもかかわらず改正されなかった。法で夫婦同氏を義務付けている国は先進国では日本のみ。結婚して夫の氏を選択する夫婦は96%と、多くの女性が不便な思いをさせられてきた。
安倍総理は、家族は国家の最小単位、ジェンダーフリーは家族を滅ぼす、といい、2010年超党派保守系議員連盟の『創生「日本」』(安倍会長)は夫婦別姓に反対する運動方針を採択した。国会議員には60、70歳代の男性が多く、男性は改姓の痛みがないので選択的夫婦別姓にも反対が多い。世論調査では賛成が反対を上回ったが、賛否が拮抗しているというのが政府の見解であり、国連人権機関からの勧告も無視され続けている。選択的別姓ならいい、現に不便を感じている人がいるのだから、と積極的に応援してくれる与党の国会議員もいて支えられたが、通称制度があるのだから問題はないとする意見も根強い。通称使用は問題解決ではないが、通称が広がることで選択的別姓のハードルを低くする効果はある。住民票に通称を認めさせるなど、人権問題としてだけではなく働く女性の経済的な面から要求を勝ち取っていくことも必要という。
話は、婚外子差別、戸籍制度にも及び、戸籍の差別表記をしないよう交渉するなど、具体的、個別的問題で粘り強く要求し勝ち取っていく努力を積み重ねている坂本さんの姿勢は共感を呼んだ。