講師の柚木康子さんは、1966年から45年間、外資の石油会社で働く。その間労働争議の中で、女性が働きやすい職場をつくるために男も女も育児時間1日2時間を求め活動。会社の合併により男女の賃金格差が拡大したことをきっかけに、組合間差別、男女間賃金差別裁判を闘ってきた。
1990年代、各地で男女賃金差別裁判が起こり、勝利してきた。しかし近年裁判所は、文書に男女別に扱う等明記されていないから差別とは言えない、明確な格差があっても考課制度や能力給だと企業の裁量だからと差別は認めない。こうした裁判を通して、多くの闘う女性たちと出会い、「均等待遇アクション21」の活動から、日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)の活動に参加した。
JNNCは、2003年7月の日本政府レポート審議(第4次、5次レポート)に際し、女性差別撤廃条約の実現を目指し結成。選択議定書の批准、民法改正(別姓の実現)を共通課題とした。1999年に採択された選択議定書では、実施措置として「個人通報制度」と「調査制度」が新たに設けられた。「個人通報制度」とは、権利を侵害された個人が委員会に申し立てる制度で、批准された海外の国々では、委員会の勧告に基づき改善された事例が紹介されている。選択議定書の批准について、裁判所の見解では司法権の独立を侵すものではないとしているが、1999年から外務省と法務省で検討を重ねたまま先が見えない。
女性差別撤廃委員会は、日本に対し2016年の総括所見で批准の検討を要請し、選択議定書の下で委員会が決定した先例について法律専門家及び法執行官に研修を行うことを求めている。選択議定書の批准は国内の差別的法制度を見直し、条約の完全履行を後押しすることが出来るなどの効果があり、自民党を含め政党・国会議員へのロビーイングを行ってきたが、「女性差別撤廃条約 個人通報制度実現アクション」の発足に向け、11月21日に準備会が開催され、2020年までに選択議定書批准を目指して活動を開始している。
なぜ長期にわたる闘いをしてきたのに日本のジェンダー平等が実現できないか、との柚木さんの話を受けて、共感する会場の皆さんから、与党を含めた国会議員やマスメディアにどう支持を広げていくか、日本の裁判所の否定的な姿勢をどう突破していくか、国民的な理解を得るために「選択議定書」という言葉が難しいので工夫が必要、など具体的な行動について、熱心な議論が交わされた。(国)