中野晃一さんは政治学が専門で、現在上智大学国際教養学部教授。『右傾化する日本政治』『戦後日本の国家保守主義―内務・自治官僚の軌跡』などの著書がある。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」呼びかけ人の1人でもある。
安倍政権がひどい。どうしてこうなってしまったのか。この現状に若い人たちがあまり反応していないし、自民党への投票率も内閣支持率も若い人のほうが高い。安倍政権が6年続いた結果、彼らには比較の対象がないのだ。中高年のほうが問題意識を持つ人が多く批判的だ。戦後日本がもう少し良い方向へもっていこうとした時代、自民党もこれほどひどくなかった時代を知っているからだ。冒頭から熱い言葉の数々が飛び出した。
欧米に比べて日本の学生は学校教育で政治意識を持つことはない、あるいは妨げられる。シールズの若者たちの共通点は、自身が沖縄や広島、長崎へ修学旅行で行った経験があることや、親、祖父母、先生たち、年上の世代から平和運動や平和教育に触れたことがあるということだった。その中で感受性があり、勇気がある子たちが声を上げたのだという。
次いで55年体制(一党優位制)とその後の政権の流れを追った。55年体制下の自民党政権は、単純に言えばお金をばらまく金権政治であり、多くの組織的腐敗を招いたが、お金は公共事業、補助金などとして潤滑油となり、長期政権に留まることを可能にした。当時の総理大臣は二派閥が独占していたが、野党社会党の存在だけでなく、多くの派閥間のせめぎ合いがチェック&バランスの作用を果たし、総理大臣がやりたい放題に出来るという状況にはなかったのだと述べた。
民主党政権が3年3カ月で壊れたとき、民主党自体も壊れた。全権委任されたかのように安倍さんが返り咲いたとき、大変な時代になる、自分自身も研究だけしていたということでは済まされないという思いに駆られて、発言や行動をしようと決心した。いま55年体制下の一党優位とは違う時代が来てしまったが、立てなおす目途もない。最後にタガをはめるのは、市民社会しかない。政治学者として感じたとも言う。
安倍政権の勝利の方程式の1つは投票率が低いこと、つまり多くの人が政治を諦めること。2つ目は野党を割って弱い状態にとどめ置くこと。分断を乗り越え、野党が候補者を1本化できれば勝負の形が出来てくる。今年は正念場だと言う。
怒って行動している中高年の人たちは、自分のためでなく、子や孫の世代にこんな社会を残すのは忍びないという思いで動いている。我々の世代が、出来ることを腹をくくってやる。その姿を次の世代に見せてバトンタッチをしていこうとしていると思うと結んだ。
終了後の質問に応じて。パリテ法(候補者均等法)が通って初めての選挙。法律は努力目標で強制力はないが、我々が参加し監視して声を上げて行くことによって実効力を持たせることができる。ジェンダーは問題なのではなく視点であり、女性の権利を尊重するような枠組みが出来てくることによって、ほかのマイノリティの人たちの声も届きやすくなる大きな1歩になる。市民が選挙を支えて行くためには選挙がない時も政治家の応援や叱咤激励をする。良い番組や企画には電話やはがきを送る。それによってメディアは視聴者の反響を知ることが出来る。また、ソーシャルメディアでの発信をと、具体的な動き方を示した。