長野宏美さんは2003年に毎日新聞社へ入社し、水戸支局、社会部、外信部を経て2015年4月から4年間、ロサンゼルス特派員として勤務。本講座の数日前に帰国し、現在は社会部デスク。
トランプ大統領誕生の差別的な言動によってアメリカは分極化し、それに危機感を持ち、自分たちが声を上げなければならないという意識から反トランプの動きが活発になったという。
2018年中間選挙の特徴は、上下両院の女性候補者が過去最多となり、結果2019年からの両院の女性議員割合は20%から23.6%へと過去最高となったことだ。性的少数者(LGBT)などマイノリティの権利が侵されることへの懸念やMeToo運動の盛り上がりを背景に、民主党から多様な女性が立候補し当選した。ニューヨーク州選出のプエルトリコ系下院議員(29歳)や、ミネソタ州選出のソマリア出身の下院議員(37歳、イスラム教徒)など、メディアに注目されている新人女性議員たちの特徴を紹介し、民主党的な人として一括りできない状況はプラスにもマイナスにも働くとしつつも、議員の中に多様な人が存在することは非常に意義があると述べた。
2020年大統領選も民主党は女性を含めて続々と立候補の名乗りをあげているが、それは許容しがたい社会の現状に立ち向かう勇敢さは政治キャリアを築く上でマイナスにならないという考え方があるからだ。「アメリカは女性の大統領が誕生しておらず、まだ政治は男性中心だ」「戦争をするアメリカでは男性の強さを表わさないと大統領として勤まらない」といった意見も根強い中で、女性候補者が多いことは、非常に大きな変化であり、トランプ大統領の存在が引き金になっているのではないかと示唆。また、ロールモデルの女性政治家と会う機会もある女性向けの政治塾も以前からあったが、近年さらに盛んになっていると語った。
4年間の取材、生活を通して、アメリカでは政治が身近にあるということを実感したという。例えば、高校生や大学生向けの政治塾が行われ、学生は政治活動をするために学校を休んで議員の応援や有権者登録を呼びかける戸別訪問などを日常的に行っている。応援をするということは、政策について勉強し、自分のコミュニティで何が必要なのかを考えるため、地域の問題に関心を持ち、自然と政治に関わる土壌ができてくる。支持政党を明らかにする人が多く、民主・共和両党の支持者が敵視し合う時期もあったが、昨年秋、南カルフォルニア大学は「政治未来センター」を開設した。そこでは両党の異なる意見に耳を傾けることが重視され、多様な人々が一緒の場にいて議論することが盛んになってきているという。アメリカは、以前はカリスマ性のあるリーダーが主導していたが、現在はソーシャルメディアの発展により、一人ひとりが変革を起こすリーダーになることができると語った。(東)