長年、フルタイムの仕事の傍ら、ボランティアとして、こどもや女性を支援する活動に携わってきた。コロナ禍によって、居場所のないこどもや暴力に晒される女性は、ますます困難な状況に直面させられており、新たな仕組みづくりが求められる。支援活動の担い手の育成も必要だ。
そこでの深刻な問題として、NPO・ボランティア団体におけるハラスメント(パワーハラスメントやセクシャル・ハラスメント)がある。社会課題の解決を目指すような団体においてハラスメントが起きているという事実自体、「そんなことは、あるはずがない」という“思い込み”のためか、なかなか認識されない。しかし、ハラスメント問題に対応しなければ、ボランティアが定着せずに次々と辞めてしまい、担い手の育成に支障を生じても、ハラスメントは繰り返される。ハラスメントを表面化させる仕組みこそが求められる。
ミア・フォルツァは、女性やこどものシェルターを運営する上で、名前を出さずに活動してきたが、ハラスメント対応事業を打ち出して、2021年、NPO法人化した。ちなみに、「ミア・フォルツァ」とは、イタリア語で「私の力」を意味する。困難な苦しい状況下にある人は、自分の力が見えなくなっているだけで、支援によって自分の力を取り戻せる、支援する側も、時として無力感に苛まれるが、自分たちの力を信じようという想いを込めている。
こども食堂やこども学習支援団体の全国的な会合の折に、ハラスメント対応事業を始めると表明したところ、それまで友好的だった団体との関係がほとんど断ち切られてしまった。しかし、ハラスメントの経験や相談が多数寄せられるという反響もあった。
ミア・フォルツァは、ハラスメント対応事業の3年計画を立てた。1年目(2021年度)は、すでにハラスメントに取り組んでいる団体へのヒアリング調査、その調査報告会の開催と報告書の作成、2年目(2022年度)はハラスメント担当者の育成研修、そして、3年目(2023年度)はハラスメント窓口担当者及び専門家とのネットワークの形成、相談窓口の設置とした。その1年目に「市川房枝女性の政治参画基金」の助成を受けることができた。
NPO・ボランティア団体において、ハラスメントが起きる可能性のある関係当事者は、役員や職員・利用者やその家族、協力者(会員・寄付者、ボランテイア・サポーターなど)、委託者や資金提供者、地域住民、その他第三者など、極めて幅広く、しかも、全ての関係者が加害者にも被害者にもなりうる。ただし、それが認識されにくい。
ハラスメント問題に取り組むのは、加害者個人を非難することが目的ではない。被害者の心身不調にとどまらず、NPO・ボランティア団体への失望が、その団体への不信に繋がり、ひいては、地域の大事な人的資源を枯渇させ、必要なサービス提供を消滅させてしまう。逆に言えば、ハラスメントを表面化させることは、ボランティア個々人が活動しやすくなり、NPO・ボランティア団体の組織力が上がることによって、ハラスメントを繰り返させない予防ともなる。
そのためには、個々の団体が努力するだけではなく、団体間の連携が必須となる。また、ボランティア・センターや男女共同参画センターなどの中間組織が、ハラスメント問題を重視することが大きな波及効果を持つ。補助金や助成金の条件としてハラスメント対応策を要請することも有効だろう。
NPO・ボランティア団体への関わり方や立場は多様であっても、「対等」な関係であれば、ハラスメントは起こりにくい。たとえハラスメントが起きても、隠蔽するのではなく、表に出して、しっかりと問題に対応することが、ハラスメントを繰り返させない、最大の予防ともなる。(眞)
【イベント詳細】2023連続講座「“政治”を揺り動かすⅡ―次世代へ希望のバトンをつなぐ」第1回
講師 |
2023年5月13日(土)13:30〜15:30 「NPO/ボランティア団体など社会課題に取り組む団体におけるハラスメントの予防と対応に向けた取り組みについて」 門間尚子さん(特定非営利活動法人mia forza代表理事) |
形式 |
オンライン(zoomウェビナー) |
参加費 |
1,100円(税込) |
定員 | 50名(要予約) |
【講師メッセージ】暴力の被害に遭った方々の対応を行う中で、全国のNPO/ボランティア団体と活動者から、ハラスメントの相談を受けてきました。被害に遭われた方が志半ばで活動を去らざるを得なくなることや、団体が
地域の信頼を失い活動停止や解散も考えなくてはならない、という事態も少なくありません。講座では、NPO/ボランティア団体におけるハラスメントの予防と対応に向けた当法人の取り組みをお伝えしながら、みなさまと一緒にハラスメントについて考えて参ります。
【プロフィール】大学卒業後、2000年よりボランティアとして、DV/性暴力被害者・ひとり親世帯・女子少年院出院者・生きづらさを抱えるこどもたちを応援中。2021年に市川房枝女性の政治参画基金の助成を受け、NPO等におけるハラスメント対応としくみづくりにも力を入れている。