日本は、COP28にて12月3日、岸田首相のスピーチを受け、石炭火力発電所を延命することに対して化石賞を受賞、さらに同5日、日本は再び化石賞の対象となった。気候変動対策に関して、取り組む姿勢が後ろ向きで国際会議の中でも足を引っ張っている。
二酸化炭素濃度は、産業革命以降に急激に上昇している。世界の平均気温は1890年から1℃以上上昇しており、主な原因として温室効果ガスの排出が挙げられ、代表的なものが二酸化炭素である。今後何も対策をとらなければ、2100年までに最大5~8.5℃上昇する。人類にとって、危険な気候を回避するために、1.5℃の上昇に抑えることが、世界共通の課題となっている。気候変動の影響は、自然界における影響だけでなく、インフラや食料不足など人間社会を含めて深刻な影響が想定される。
日本の温室効果ガス排出量は毎年約12.5億トンである。排出量のうち火力発電が3割を占めるなど、大規模な産業部分で全体の約7割を輩出しており、大きなシステムチェンジが必要だが、政策的に踏み込めていない。
ヨーロッパの国々では2030年までに石炭火力発電所を止めていく方針であるが、日本は2020年以降も石炭火力発電所を新規で動かしている。主な理由としては2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故をきっかけに、電力の自由化が進められ、価格の安い石炭火力発電所に飛びついたことが挙げられる。
2023年2月、GX基本方針が閣議決定され、同5月、GX推進法が衆院本会議で賛成多数で可決、成立した。GX基本方針には、原子力の活用など既存の化石燃料を維持することにつながるシステムや、効果不明なものも含まれる。
最近はカーボンニュートラルの柱のように水素が位置づけられるが、自然界にある水素をかき集めるわけではなく、現状は化石燃料や石炭から製造されるグレー水素やブラウン水素が主流であり、これらは製造過程で二酸化炭素が大量に発生する。政府が推進するブルー水素は、化石燃料をもとにして水素の製造時に排出される二酸化炭素を回収し、地中に埋めるというものだが、全て回収することは不可能であり、コストもかかり、適地もなく、簡単ではない。
国際的な環境保全への要請の高まりから、環境に優しい商品や活動をアピールする企業も増える中、実態を伴わずに消費者を誤認させる広報戦術「グリーンウォッシュ」の問題は、本来必要な環境対策の取り組みを遅らせる。
市民は、「脱炭素」「カーボンニュートラル」などの内容が本当に正しいことなのか見極め、正しい情報を入手し、誤った情報に惑わされないようにすることが必要である。選挙での気候変動対策を重視する人への投票、太陽光パネルの設置など、個人として取り組めることは多い。(東)
【イベント詳細】2023連続講座「“政治”を揺り動かすⅡ―次世代へ希望のバトンをつなぐ」第7回
講師 |
2023年12月9日(土)13:30〜15:30 「気候危機への対応と日本に求められていること」 桃井貴子さん(NPO法人気候ネットワーク・東京事務所長) |
形式 |
オンライン(zoomウェビナー) |
参加費 |
1,100円(税込) |
定員 | 50名(要予約) |
【講師メッセージ】今、地球規模での気候変動が大変深刻な状況になっています。この原因は私たち人間活動の中で排出される二酸化炭素など温室効果ガスです。危険な気候を回避するためには、社会システムを大胆に変革し、温室効果ガスの排出をこの10年で大幅に削減することが求められています。私たち一人ひとりが自分ごととしてとらえ、社会をどう変えていく必要があるのか、日本で今何が一番問題になっているのか、セミナーを通じて皆さんと共有したいと思います。
【プロフィール】市民活動をはじめて約30年。原発もない、温暖化もない持続可能な未来をめざし、政策提言や市民啓発など幅広く活動を展開している。現在は、日本の石炭火力発電所を2030年までにゼロにすることをめざす「Japan Beyond Coal」などの運営に携わる。