自己肯定感の低い子ども
不登校の子どもが増加する背景には、いじめがあり、文部科学省が発表したいじめの認知件数(2023年)は過去最多となった。日本の子どもの特徴を一言で表すと「自己肯定感の低さ」である。不登校・ひきこもりは「いのち」に関わる問題であり、「いのち」を真ん中に据えた安心して過ごせる「居場所」をつくることが必要だ。
子ども夢パーク
1991年、多摩川(タマリバー)のほとりに「フリースペースたまりば」(神奈川県川崎市高津区)を開設し、98年からは「川崎市子どもの権利に関する条例」の策定に関わった。2003年、条例の具現化を目指してオープンさせた「川崎市子ども夢パーク」(以下、子ども夢パーク)には、プレーパークやフリースペースがあり、子どもが遊びと暮らしの主体を取り戻すことに重点を置く。
多くの自治体で注目されているのが、防災対策の視点からみたプレーパークの必要性である。地域に遊び場をつくり、子どもが火を扱い、炊き出しをできるようにしておくことは将来的な防災対策になるだけでなく、子どもの自己効力感・自己有用感を育むことにもつながる。
また、学校に行けなくなった子どものために、子ども夢パークの中に開設したのが、不登校の子どもの権利保障を目指してつくられた日本で初めての公設民営施設「フリースペースえん」だ。会費は無料で、義務教育の年齢や障害の有無にとらわれず、異年齢が混ざり合うインクルーシブな場である。
親を支える仕組みとして3種類の親の会「フリースペースえん保護者会」「不登校グループ別相談会」「親の会たまりば」を開催している。大人にできることは、子どもの邪魔をせず、好奇心の芽を摘まないことだ。不登校支援に必要なのは、親支援と子どもが安心して過ごせる居場所支援なのである。
考え方を問い直す
学校でじっと座っていられない子は「困った」子ではなく、「困っている子」である。この子を「学校不適応児」と呼ぶのは失礼な話であり、これこそ多様な特性を持った一人ひとりの「子どもに適応できない学校教育」課題である。今、重要な教育施策の転換期に来ており、一人ひとりの背景やニーズに合わせた多様な学びと育ちを保障する環境づくりが必要とされる。
私たちが大切にしているのは、その人を治療しようとする「医療モデル」ではなく、社会や環境の方に働きかけて、変えていこうという「社会モデル」だ。「生きてるって、楽しいよ」と心から思える子どもたちを増やすためには、おとなが幸せに生きている姿を子どもたちに見せられることが大事である。(東)
【イベント詳細】2023連続講座「“政治”を揺り動かすⅡ―次世代へ希望のバトンをつなぐ」第8回
講師 |
2024年1月13日(土)13:30〜15:30 「安心できる子どもの居場所づくり」 西野博之さん(認定NPO法人フリースペースたまりば理事長) |
形式 |
オンライン(zoomウェビナー) |
参加費 |
1,100円(税込) |
定員 | 50名(要予約) |
【講師メッセージ】いのちの炎を再び輝かせるには、まずはたっぷりとした「子どもの時間」を取り戻すこと。おとなが決めたカリキュラムを押し付けるのではなく、自分が何をしたいのか。どう生きたいのかに迷いながら揺れ動く子どもの「いのち」に寄りそうこと。いま目の前の子どもの「ありのまま」をしっかりと受け止めることの大切さを、子どもたちから教わりました。「生まれてくれてありがとう」「あなたがいてくれて、幸せだよ」。このメッセージをしっかりと子どもたちに届けたい。子どもの「いのち」を真ん中に、「子どもの最善の利益は何か」を問い続けながら、これからも「だ
いじょうぶのタネ」をまいていきたいと思います。
【プロフィール】認定NPO法人フリースペースたまりば理事長。川崎市子ども夢パーク・フリースペースえん他、各事業総合アドバイザー。1986年より不登校児童・生徒や高校中退した若者の居場所づくりにかかわる。1991年、川崎市高津区にフリースペースたまりばを開設。不登校児童・生徒やひきこもり傾向にある若者たち、さまざまな障がいのあるひとたちとともに地域で育ちあう場を続けている。