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市川房枝政治参画フォーラム「一人ひとりが尊重される権利」 を守る社会に

1.  基調講演 「女性差別撤廃条約・日本審査へむけて

弁護士・当財団理事長 林 陽子氏

基調講演は、①女性差別条約の内容 ②女性差別撤廃条約と日本の関係 ③条約履行の監視制度 ④日本のジェンダー平等 ⑤2024年10月(予定)の日本審査に向けて ⑥⑤に対する日本政府の回答 ⑦個人通報制度の進展 ⑧地方議会、地方議員への期待(意見書採択、人権条例の制定)の内容で行われた。国連の女性差別撤廃委員会は、コロナ禍等で延期になった日本の条約実施状況の審査を本年10月(予定)に8年ぶりに行う。

 

1.女性差別撤廃条約について 

・女性差別撤廃条約は30条からなり、第1条は女性差別を定義している。以下16条までは女性の権利の中身を、後半は事務手続きが書かれている。

・日本は、1980年に女性差別撤廃条約に署名し(市川房枝は超党派の国会議員を集め、日本が署名するよう働きかけた)、批准に向けて「男女雇用機会均等法の制定」「国籍法の父系優先主義を父母両系主義に改正」「高校家庭科の女子のみ必修を改正」の国内法整備行い1985年に批准した。

・1999年に条約の選択議定書が国連で採択されたが、日本は未批准である。

・国際条約の履行確保(監視)制度として1.国家報告制度、2.国家通報制度、3.個人通報制度、4.調査制度がある。女性差別撤廃条約では1のみを規定、3,4は選択議定書に規定されているので、運用には選択議定書の批准が必要となる。2は現在機能していない。

 

2.日本のジェンダー平等の現状―令和4年「女性版骨太の方針」令和5年「男女共同参画白書」より

・男女間賃金の国際比較、第1子出産後の就業継続率、衆参両院の女性候補者・当選者割合、地方議員の女性議員割合、高齢者・一人親家庭の貧困率、ジェンダーギャップ指数が示され、これらから見えることは、少子化対策や経済活動における女性のエンパワーメントは奨励しているが、人権の保障やリプロ、雇用における平等、複合差別の問題など横串をさして取り組むことができていない。ジェンダー平等指数が低位から脱出できないのは、ジェンダーヤップ解消に取り組む姿勢が、他国に比べ積極的ではないことを示している。

 

3.女性差別撤廃委員会からの質問事項と回答など

 女性差別撤廃委員会から、皇室典範、民法、刑法、労働法、税法、年金制度、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ、意思決定の場に女性を増やす戦略、マイノリティ女性の権利擁護、ヘイトスピーチからの保護など多岐にわたる指摘をうけている。40ページにわたる資料として添付された「女子差別撤廃条約実施状況第9回報告」は委員会への事前質問票への回答である。これまで何度も勧告を受けているにもかかわらず、前進した回答は少ない。11年間、国連女性差別撤廃委員会委員、2015年から2年間は委員長も務められた講師の経験を交えて明快な説明がであった。

2024年の日本審査においては、包括的反差別法の制定、個人通報制度の批准、国内人権機関の創設についての勧告を引き出し実現させることが重要である。また、女性差別撤廃委員会は条文ごとの解釈ガイドラインを作っている。8条の政治参画についてのガイドラインを2024年秋に採択予定である。

 

4.個人通報制度について

 個人通報制度の諸外国の先例をあげ、日本が個人通報制度を含む選択議定書を批准しない理由として、日本は「司法体制や立法施策の関連」「同制度を受け容れる場合の実施体制等」と回答している。私見であるが、政府をためらわせるのは、時間的管轄の問題(継続的人権侵害がある場合は選択議定書発効前の事実についても、管轄が及ぶと明文化している)、国籍・居住要件(通報の申し立て権利者に国籍・市民権・居住権・在留資格の要件はない)ことが戦後補償に及ぶことや賠償を勧告された場合の取扱が考えられる。

 

5.地方議会、地方議員に何ができるか

・女性差別撤廃条約選択議定書批准へむけた地方議会での意見書採択は2024年4月現在234議会。

この他にも、障害者差別解消法、ヘイトスピーチ法、部落差別解消法の「反差別3法」を受け、自治体での条例制定が加速している。ジェンダー平等・男女共同参画条例も多くの自治体で制定されている。差別を受けている人が、申し立てができ、それを受け止め、救済できる機能が必要。議員同士が先進的取り組みを学びあい、政策を進めてほしい。(田)


2.「不登校が増える今、子どもたちに大人は何ができるか

NPO法人キーデザイン代表理事 土橋 優平

 NPO法人キーデザインは、不登校に悩む親子のサポートを2016年から行っている。現在スタッフは11名。

 ひとりにならない社会をつくることをビジョンとして、表面的な学校復帰を目的とせず、個性を大事にし、学校以外の安心できる場所としてのフリースクール「ミズタマリ」、小・中学生・通信高校生向けの家庭教師プログラム「ホームスクール」、SNSアプリLINEを通した子どもの不登校に悩むお母さん・お父さん向けの無料相談窓口の「お母さんのほけんしつ」、フリースクールや親の会の情報を一覧にして発信する「不登校ポータルサイト」を運営している。

 フリースクール「ミズタマリ」は、時間割なし・校則なしで、自分たちで考え解決の道を探り、子ども10人に対して大人3人が担当する。無料LINE相談窓口は全国から3,943名の登録があり、対面相談も行い支援機関につないでいる。

 令和4年(2022)の調査では不登校児童生徒(病気や経済的なことなど特別な事情がなく年間欠席日数が30日以上)は、10年連続増加し、小中学生は299,048人で中学生の17人に1人となっている。小中高校生の自殺者数は512人、さらに精神疾患による休職した教職員は5,897人と過去最高となっている。学校そのものに余裕がなく窮屈になっているのではないかと感じている。長期欠席者は460,648人、病気が理由の長期欠席は75,597人で、起立性調節障害・過敏性腸症候群・不安障害等ストレス性の病気が多くなっている。

 2024年2月の子どもの不登校が家庭にどう影響を与えるかに関する実態調査を行ったが、7割の親が仕事に影響あり、退職14.8%、休職6%、遅刻早退欠勤31.5%となっており、子どもの不登校による離職の実態がある。働きたかったが子どもの体調不良や心の不安定さを考え、家で支えることに専念することにしたという理由が多く、月収が8万円以上減った家庭が35.8%、収入がほぼゼロになった家庭も1.9%となっている。また、親自身の健康状態も医療機関にはかかっていないが心の不安定さを感じているが約60%、何らかの心に病の診断やカウンセリングを受けているが25.5%という結果とともに、夫婦間での子どもの不登校について満足に相談ができているのは22.6%に留まっている。

 行政の支援は、自治体によっては月2万円を家庭に補助、校内フリースクール設置、フリースクールに教師のサポートを配置、認証フリースクール制度による運営補助等、徐々に進みつつあるが、企業からの寄付や会費等での運営は非常に厳しいのが現状である。

 最後にいくつかの事例を踏まえ、子どもたちの心の叫びを話された。不登校は問題ではなく、子どもや親のせいでもない。学校以外の学びの場や、つながりの機会を認めない社会の空気に問題がある。学校に行かないことは決して悪ではない。学校へどうやって戻すかという学校依存社会になっている。ほんとうに必要なことは、不登校で孤立する親子の味方、そして、学校以外の多様な学びの選択肢があるということだった。(山)

 


 3. 発達障害のある人への差別の禁止」

放送大学教授  川島 聡

発達障害者支援法におけるそれぞれの発達障害の定義と特性について説明があり、国連の障害者権利条約を締結するために、2013年5月障害者差別解消法成立、2021年5月には、改正障害者差別解消法が成立し、事業者の合理的配慮が努力義務から義務となる。対象分野は、日常生活・社会生活の分野全般に及ぶ。ただし、雇用関係における障害者差別の禁止と合理的配慮義務は、2013年改正の障害者雇用促進法の下で、事業主の合理的配慮は義務となる。

・障害者差別解消法が禁止する2つの差別

① 不当な差別的取り扱い②合理的配慮の不提供

・合理的配慮のポイント(7つの要素)①個々の要素②非荷重負担③社会的障壁の除去

⑤意向尊重⑥本来業務付随⑦機会平等⑦本質変更不可

・合理的配慮と環境の整備(バリアフリーの2つの方法)

①合理的配慮のプロセス:個別的・事後的・対話的性格

②環境の整備(事前的改善措置)のプロセス:集団的・事前的・対話的性格

厚労省のQ&Aや裁判所の判例、想定される様々な事例を挙げて説明された。(青)

 



市川房枝政治参画フォーラム2024 「一人ひとりが尊重される権利」を守る社会に

【主催者メッセージ】

こども基本法が施行され1年。「生きづらさ」を抱えている子ども達は基本法にある「保護され平等に教育を受ける権利」が保障されているでしょうか。不登校が増える今、子どもたちに大人は何ができるのか、不登校をテーマにフリースクールを運営する講師から実践を学びます。

 また、発達障害による行動への周囲の無理解が当事者の生きにくさにつながっている状況下、発達障害への差別禁止について学びます。

 日本は1985年、女性に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とした「女性差別撤廃条約」を批准しており、今年、条約履行状況について、国連の日本審査があります。国際基準の女性の権利を保障している条約が機能するために、私たちができることは何かを学びます。

日時 2024年5月25日(土)10:00~16:15
会場

婦選会館<対面式>

(東京都渋谷区代々木2-21-11)

講師

▽基調講演

女性差別撤廃条約・日本審査へむけて
林 陽子さん(弁護士・当財団理事長)

▽講演

不登校が増える今、子どもたちに大人は何ができるか
土橋 優平さん(NPO法人キーデザイン代表理事)

▽ 講演

発達障害のある人への差別の禁止

川島 聡さん(放送大学教授)

▽16:30~17:30 交流会(自由参加・要予約・茶菓代500円)

参加費

現職議員12,000円・現職議員以外5,000円

(音声(CD)受講有り:1コマ3,000円+送料)

※お振込方法は本ページの最下部にございます

定員 約40名(要予約、受付先着順)
申し込み方法 フォーム、メール、FAX、電話でお申し込みください。