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脱原発1日セミナー「福島から12年―改めて脱原発をめざす!」

➀映画「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」

2014年樋口英明福井地裁裁判長は、関西電力大飯原発3・4号機の運転差止を命じる判決を下し、さらに15年には、地域住民の申立てを認め、高浜原発3・4号機の再稼働差止の仮処分決定を出した。原発は、高度の安全性が求められ、耐震性基準地震動を超える地震が10年間に5回あり、原発が頻発する地震に耐えられないこと、生活を基準とする人格権(生命、健康)も脅かされる、と指摘する樋口裁判長。訴訟の先頭に立つ河合弘之弁護士は、樋口裁判長の分かりやすい理論で新たな裁判に挑む。

一方、福島では放射能汚染によって廃業した農業者が農地の上で太陽光発電をする(営農型太陽光発電)ソーラーシェアリングを「希望の持てる世界」として始動させる、原発をとめるために。


②基調講演「岸田政権の原発回帰政策の問題点」松久保肇氏(原子力資料情報室事務局長)

老朽化した原発の延長許可が原子力規制委員会から経済産業省に出され、原発の耐用年数・運転期間を40年、最大60年、停止期間はプラスされる。2030年代に原発を1基新設するとし、岸田政権は、将来に渡って原発を使い続け、核燃料サイクルも積極推進と政策を変更した。

・WMO(世界気象機関)は2027年までに世界の年間平均気温が1.5度越えになることが1回以上起きる確率が66%と分析し、パリ協定は,今世紀末までに気温上昇を1.5℃に抑えると目標を示している。

・政府は、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律・GXの基本方針を閣議確定し―DX推進法――原子力の推進、再エネの規律強化など電事法,炉規法、原子力基本法など5法案を束ねた。

 今後10年間に原子力、水素/アンモニアの需要拡大支援、抜本的な省エネの推進、新技術の研究開発等に20兆円の支出をする。

 

・国のエネルギー関連研究の原子力関連に11兆円(1974年から2021年度)

・電源別のCO2排出量以外に、いつ、CO2排出量を削減できるかは大きな課題で、原子力―計画から約20年かかる、火力―約10年、水力―約5年、太陽光―約1年程度となる。原発新設には、計画から約20年を要するため、その間の発電は別の電源で代替えされ、結果として、建設期間が大幅に少ない太陽光や風力に比べて、CO2排出がはるかに大きくなる。

・CO2 排出削減コストが高い原発は、脱炭素に貢献できるのか。

 原発の発電コストは上昇傾向にあり、再エネの発電コストは下落著しく、電力会社は巨額の原発新設コストを負担できず、経産省は原発建設費を消費者に転嫁する方針。

・老朽原発の数は、国によって大きく異なり、最高齢原発は53年で、米2基、インド2基スイス1基。日本の原発設備利用率は、最大で80%、平均で50~60%代である。

・原発の技術的確認における劣化予測は、最大20年。老朽化した原発の規制が変更され、運転期間の延長は、安全規制上の必要性から定められたものではなく、利用政策・立法政策からであり、規制委が主講義・提案者とならない法構成が必要である。

・経産省は、脱炭素、電力安定供給に必要として延長認可したが、原子力規制庁の組織構成は、幹部職員・トップは経産省出身者が占め、規制と推進の分離が形骸化し、規制側と推進派のなれ合いが復活。危険な時に止める判断ができるのか、それだけの覚悟、持てる環境にあるのか。

・核廃絶問題

(バイデン副大統領・当時)日本が明日にでも核武装したらどうなるか、日本は、実質的に一夜で核武装する能力を持っている。―米国の懸念

(佐藤行雄元国連大使)米国が日本に核の傘を提供する大きな動機が日本の核武装を防ぐことになる。

 更に、中国、北朝鮮は日本の核物質保有に懸念を示している。

・日本の濃縮ウランは、オーストラリア32%、カナダ23%で採掘され、主にアメリカ、フランスで濃縮されている。

六ヶ所核燃料サイクル施設は、使用済み燃料からプルトニウムが分離されるが、総事業費16.3兆円、1,993年建設開始したが、トラブル続きで竣工延期を重ね、未だに未完成。

六ヶ所ウラン濃縮工場は、1992年操業開始。天然ウラン鉱石のウラン235含有率は0.7%程度。これを核燃料にするために、3から5%にまで濃縮する施設。

―様々な観点から問題をごまかされないよう指摘された。


▽ 自治体からの報告

・宮城・南三陸町議の及川幸子さん「トリチウムの放出が生業を奪い取るかも」、宮城・岩沼市議の布田恵美さん「東日本大震災から12年岩沼の今とこれから」の報告。

 

避難所での生活―仮設住宅―集団移転等の生活再建の状況、当時市職員としての行動。そして、国の一方的な福島第1原発事故の「アルプス(ALPS)処理水」の海洋放出計画に対し、国民の理解を得ずに放出し、安全性への懸念、風評被害が起きる可能性、水産物の価格の下落や買い控え等様々な問題に地域も全漁連も反対の姿勢を崩していない。宮城県議会も反対の意見書を国へ提出する等、地元の活動報告があった。

・汚染水の備蓄タンクの置き場所がないので海へ放出すると国は理由の一つにするが、置き場所はあると先の松久保氏の弁。

(2023.8.24処理水放出開始)

詳細は女性展望2023年11-12月号に掲載予定。

(青)



脱原発1日セミナー「福島から12年―改めて脱原発をめざす!」

【主催者メッセージ】

東電福島第1原発事故から12年経過した今も、原子力緊急事態宣言は解除されていません。

政府は、漁連など地元の反対にもかかわらず、今夏に汚染水の海洋放出する動きや、既存原発の延長や建て替えなど前のめりになっています。大飯原発の停止命令を下した裁判長のドキュメンタリー映画から、また現政権の原発回帰政策の問題点も学び、何より原発事故隣接自治体の女性議員の声を聞き、これからの脱原発社会を考えて行くために、是非ご参加ください。

日時 2023年8月4日(金)10:15~16:00
会場

婦選会館<対面式>

(東京都渋谷区代々木2-21-11)

講師

▽映画上映

原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち(上映時間92分)

▽基調講演

岸田政権の原発回帰政策の問題点
松久保肇さん(原子力資料情報室事務局長)

▽ 自治体からの報告

トリチウムの放出が生業をうばい取るかも

 及川幸子さん(宮城・南三陸町議)

東日本大震災から12年 岩沼の今とこれから

 布田恵美さん(宮城・岩沼市議)

参加費

現職議員12,000円・現職議員以外5,000円

(音声(CD)受講有り:1コマ3,000円+送料)

定員 約40名(要予約、受付先着順)
申し込み方法 フォーム、メール、FAX、電話でお申し込みください。